The Axiom of Choice(Holland)に掲載されたレビューの日本語訳

 

― 楽 曲 −
この曲のオープニングを聴くとニューメタルかパンクロックバンドと間違えるかもしれないが 聴き続けるとその印象は容易に払拭されるだろう。スピード感溢れるメロディックなフルート の音色はハードなギターとドラムと上手く混ざり合っている。先ず最初に頭に思い浮かぶ名前 は少なくとも一箇所のメロディーによるものだがジェスロ・タル。そして更にはスペンサー・ デイビスバンドのGimme Some Lovinである。音楽は全般にジェスロ・タルよりも激しく、 ヨーデルはないがフォーカスをも思わせる。怒り狂ったメロディーのジャズロック。そして、 繰り返しの多いメロディーが特にいい。

"Go Home!"を聴いて思い起こす名前はANEKDOTENだ。ここではトランペットが入り、悲しい 部分を成している。もう一つ近いバンドとしてイタリアのLA ZONAが挙げられる。最初の2− 3分はフルートの音がゆったりと曲がりくねって流れる一方でドラムはジャズのスタイルに近い。 容易に想像できるが、彼らはAFTER CRYINGを聴いた事がないだろうが、彼らとの共通 点を 感じ取る事ができる。類似性は演奏様式と感性であり、楽曲そのものではないのだが。ここでは ギターが身を潜め、ベースがたっぷり聴けるし、フルートとトランペットは即興演奏の様である。 楽曲は組み立てられ、何か悲しいものに壊されて、そしてまた、ゆっくりとだがしっかりと起き 上がってくる。その後、数分間はギターがメロディーの為に殆どダンスプレーの様に入ってくる。 メロディーにはどこかアラビア風なものが感じられる。9分程過ぎた所でテンポが変化するが、 これはGordian Knot(例えば、明るいリバーダンス等)の傾向である。

"Memory"はコツコツと刻むリズムギターで始まる。我々はこの瞬間にプログレッシブ・メタル の領域にいる。驚くべき事に、ラウド系音楽に加えて雰囲気に満ち溢れたギターのラインと、 空間を引き裂く様なギターソロ。これには正直ぶっ飛ばされてしまう。

"Trash Can..."は高速のギターソロが入る前に日本的な叫びで幕を開ける。素晴らしい事には、 肥えた耳の前では単なるダンスミュージックではなく、何か意味のあるものだと言う事である。 彼らは無難に演奏しているが、彼らの演奏は演奏そのものに支配されてはいない。冷める事の ない興奮がここにある。

"Crisis"でアルバム中、最長の曲に到達する。ドンドンと叩きつけるオープニングで始まり、またフルートが演奏に加わってくる。この時、我々は更に叙事詩的な曲に接していると感じ、再度、ANEKDOTENのムードが戻ってくる。(メロトロンはないが。残念!)直ぐに曲はギアを入れ替えてリズムギターが動き出すと、どの曲よりもプログレ・メタルの血脈を感じる。しかし、それが どうフルートと一緒に仕事するかって? 素晴らしいでしょう?! そして、勿論ドラムも手を 休めてはいない。楽曲の流れを変える時に即興的要素を取り入れ、その都度、ドラム、ギター、 そしてフルートが前面に踊り出る。多かれ少なかれ全ての演奏者が好きな事を演る。そして 暫しの静けさと平和の後にプログレ・メタルの側面が顔を上げてくる。ここが最高に素晴らしい。 その後、曲はゆっくりと流れ、プログレ・メタルの影響から離れないものの、70年代のアングラ ロックの様なサウンドに戻る。私としては何か叙事詩的なものを期待していたが、ジャズロック的 要素が勝っている様に思える。しかし、メロディーは決して忘れられたり、無視されてはいない。 そしてメロディアスなギターとフルートでエンディングを迎えている。

"Tiny Ego"は短いが様々な要素が詰め合わされている曲だ。歪んだギターによるオープニングは 素晴らしく、それから曲は沈み返り、何かメロディックに憂鬱な暗い世界に流れていく。ここでも 一種、ANKEDOTENのムードを感じるが、演奏自体は全く異なる。ラウドな部分は打撃的で非常に男臭い。

"Seven Minutes Squeezer"は長い曲で、フルートとギターの長く伸ばされたクレッシェンド、 男っぽいがそれでいてメロディアスだ。それがここでは重要だ。彼らは彼らのChopを演奏する。 非常に上手く彼らのロックを演奏し、グラインドし、エクスペリメントする。しかし、常に メロディーに立ち戻る。

そしてボーナスとして"Hocus Pocus"が収録されている。このフォーカス の曲は彼らの技量とユーモアを見せつけている。熱狂的なロックで素晴らしい出来栄えである。 ヨーデルはない(ヨーデルを他のもので代用しているとは言わないが)。

 

― 結 論 −
「運命の輪」は最近聴いたジャズロックでは最高のアルバムの一枚である。このバンドを一言で 言うとジャズロックであろうが、実に様々の要素がここにある。プログレ・メタルギター、 Tullian/ Focus を彷彿とさせるフルート、(メロトロン無しの)Anekdoten のムードと感性、 キングクリムゾン(特に後期)の愛好者も飛びつくであろう。少しエクスペリメントがかった 部分、センシティブなテーマ、最高の演奏、プロフェッショナルなアートワーク(これは電車 の中で無くしてしまったが)、そして楽曲の全て。 今年の最高作品の一つであろう。

 

Jurriaan Hage, Editor
Axiom Of Choice
Utrecht, The Netherlands